| 農場主が愛してやまないエルガー作曲「創作主題による変奏曲」、ー通称「エニグマ変奏曲」。これまでに聞いてきたさまざまな指揮者、オーケストラによる音源を独断と偏見に満ちた筆致で紹介します。 |
1.ピエール・モントゥー指揮ロンドン交響楽団 1961年、スタジオ![]() トップバッターは今のところ一番お薦めの演奏。 中学の時に買ったレコード。お小遣いが月2000円だったっけ。廉価版しか買えなかったなあ。針音がぶちぶちですが、穏やかな、自然な流れの音楽が生き生きと聞こえてきます。ブラームスの前でビオラを弾いたり、「春の祭典」のあの初演を担当したり、という音楽史に燦然と輝く経歴。エルガーとは交流はなかったのかな。でも最後の来日公演でこの曲を取り上げているし、十八番にしていたのではないだろうか。 変奏の一つ一つ、丁寧に歌心たっぷりに聴かせる。中間部の美しい「ニムロッド」もその一つ。よくある、この曲だけに多分に感情移入して曲のピークを作ってしまうような演奏とは一線を画して、あくまでも14ある変奏のひとつととらえている。淡々と音楽が流れる中に滋味があふれる。最後の盛り上げ方は立派のひとこと。エルガーの友人たちを描いているようでいて、そのじつ人生の、また人間の素晴らしさを高らかに歌っているような、スケールの大きい賛歌になっていると思う。 欲をいえばウイットがもうちょっと欲しいかな、とも思うが、ひとつひとつの変奏の個性を浮かび上がらせるよりも、終曲へ向けての構成感を採ったというところだろうか。うまく言えないけど。 |
| 2.作曲家指揮 ロイヤル・アルバートホール管 1927年、スタジオ この曲の聴き比べをするうえで絶対に欠かせないのがこれ、作曲家自身による自作自演だ。ネット https://www.youtube.com/watch?v=kaPtKoL-FsM で聴いたので音質はーそもそも1927年録音とあるから推して知るべしだが-さておき、作曲家のスコアに込められなかった思いをこうして音として聴けるのは幸いなことだ。オケはロイヤル・アルバート・ホールとあるが、一時期首席指揮者を務めるなど関係が深かったロンドン響だろうか。 冒頭のテーマは思い入れたっぷりに提示される。ポルタメントの多用はかのメンゲルベルグを思い出させるほど甘くせつない。トロイテは快速。スコアにないティンパニのアクセントや、アッチェレランドがみられ、興に乗った演奏になっている。ニムロッドも伸び縮みする自由なテンポ。ここでもポルタメントが多用され、夢のような世界が描かれる。第11変奏のg.r.sは史上最速とも思える猛烈な演奏。犬が急流に飛び込む様子が楽しく描かれる。ここ、この演奏で一番好きかも。そして終曲。スコアにはアゴーギクが細かく指定されているが、ここではインテンポで突き進む。ディナーミクも単調で、ppのティンパニを強打させるなど、「?」がいくつもつくような演奏。 全曲を通して聴いて、なんだか違和感が否めない。前半の豊かな感興が、終曲が近づくにつれだんだん冷めてくるからだ。緊張感がとぎれた、と言ってもいいかもしれない。 と、ここまで書いてyoutubeのコメント欄に目が止まった。技術的な問題から、当時は時間制限がある中での収録ではなかったか、というもの。とすれば、録音助手などからの「あと3分」といった指示がある中での録音だったかもしれず、以上ぐだぐだ述べた問題もそうした制限に帰するのかもしれない。 ま、なにはともあれ聴いてみてください。貴重な録音であることは間違いないので。 |
| 3.トマス・ビーチャム指揮 ロイヤル・フィルハーモニック管 1954年、ロンドンでのライブ ![]() 音質はよくないが、一言で言ってウイットに富んだ、とてもチャーミングな演奏。エルガーの良き理解者だったビーチャムらしい、自家薬籠中の演奏といっていいだろう。 スタイルは自作自演に近い。テーマは同様にゆっくりと歌われるが、作曲家のように時代がかったポルタメントを多用するということはなく、現代的だ。 以降、各変奏曲は性格付けが見事に行われる。たとえば4曲目のW.M.B。短気な性格の主人公らしく、咳き込むように怒鳴り散らしたかと思うとあわただしくドアをバタンと閉めて出て行く様子がユーモラスだし、かっこよく演奏されることの多い7曲目troyteも無器用なピアノの様子が容赦なく描かれる。また一転ニムロッドではうなり声をあげてオケを奮い立たせ、高らかに盛り上げる。ここで登場するエルガーの友人のなかにはビーチャムも知り合いだった人も多いはず。親しみを込めた手紙を思わせてくれる。 終曲。楽譜通りに演奏されることがー自作自演も含めて(笑)ー少ないが、練習番号69のStringendoがきっちり行われているのに好感が持てた。ライブらしい、勢いのある締めくくり。拍手は思ったほどではない。 1961年まで生きたビーチャムは後年ステレオ録音を数多く遺している。この曲ももう一度ちゃんとした形で残してくれていたら、というのは無い物ねだりだろうか。 |
4.バルビローリ指揮フィルハーモニア管 1963年 スタジオ録音![]() EMIエルガー全集に収録。 霧深いロンドンの朝(行ったことないけれど)、ゆっくりとテーマが浮かび上がってくるような冒頭から、気品がにじむ。さらに第5曲R.P.Aや第9曲ニムロッド、そして終曲などでバイオリンやビオラがsulGやsulC、あるいは開放弦でつくりだす独特の渋い響きは、これぞイギリス音楽の王道、と思わせてくれる。 チャイコフスキーやドボルザークの演奏で暴れん坊ぶりを示すサー・ジョンだが、さすがにこの曲では自国の作曲家への敬意を見せる。美しいニムロッドでも極度に盛り上げることはせず、節度ある歌を聞かせてくれる。各変奏の性格付けも見事で、通底する「霧の中」から大伽藍のような終曲に到達するやシベリウスの第二交響曲を思わせるようなカタルシスを築く、一気呵成ともいえる演奏。モントゥー盤などと並ぶ、この曲の模範的なパフォーマンスだろう。 |
| 5.ジュゼッペ・シノポリ指揮フィルハーモニア管 1989年 スタジオ ![]() 回を追うごとにフェイスブックの「いいね」が減る究極のオタクシリーズ。これまでの4枚から一気に新しくなり、世は平成、1989年の録音。大して期待しないで聴き始めたら一気に引き込まれました。こ、これは、名演だ!・・・。 一言でいえば、ドラマチックな演奏、ということになるだろうか。メリハリがあって、めちゃめちゃかっこいいのだ。特に大好きな「troyte」のティンパニは心すくような打ち込みだ。フィルハーモニア管のティンパニ、こんなにうまかったっけ?もしかしてシュターツカペレ・ドレスデンのゾンダーマンを連れてきた? 秀逸な録音も特筆すべきこと。オケを対向配置にしているのでバイオリンの掛け合いがはっきり聞き取れる。第二変奏「H.D.S-P.」ではピアノの指練習を表しているといわれる難しいパッセージが左右で飛び交うのが楽しい。実は定演でこの曲を初めて取り上げる伊那フィルも対向配置に挑戦。慣れない第一バイオリンの隣に座って落ち着かないびよりすとの農場主、でも休みの多いこの変奏では1stと2ndの奮闘ぶりを楽しく見守ることができて幸せなんです。あんなシャープやらナチュラルだらけで激しい移弦を伴うパッセージ、びよらには絶対無理。下に降りてこなくて本当に良かった。エルガー大先生もそこは分かってらっしゃるようで、優しく書かれたパート譜に感謝です♡ きれいな録音のせいか、第13変奏ロマンツァ(航海を表現)で船のスクリュー音を表しているらしいドラムロール(ティンパニをスネアドラムのスティックで叩く指示)が、そうではなくどうもヘリコプターかオスプレイのプロペラ音に聞こえてしまうのは私だけでしょうか。 話題がちょっとずれました。とにかく立派な演奏。イギリス音楽というよりも、大叙事詩あるいは傑作の屏風絵のような一大スペクタクルを味わえる、といえば良いのだろうか、ううむ、やっぱりうまく言えない。ま、初めてこの曲を聴く若い人にはお薦めだと思いますよ。 併録のチェロ協奏曲も絶品。デュプレ・バルビローリ盤以外は聴いた気がしなかったが、ここでのマイスキーは完璧なテクニックで入魂の演奏を聴かせる。オケとの丁々発止もスタジオ録音と思えないほど熱い。このカップリングでは理想的な一枚ではないだろうか。 それにしてもこれだけの演奏を聴かせてくれたシノポリ、54歳の若さで急逝してしまったのが悔やまれます。ぜひ手兵のシュターツカペレ(ティンパニはもちろんゾンダーマン!)でエニグマを聴きたかった! |
6.エードリアン・ボールト指揮 ロンドン響 1970年 スタジオ![]() 対向配置の演奏をもうひとつ。エルガーの晩年を支えた英国の名指揮者による名録音。自身が初演した「惑星」とのカップリングでお得感満載です。 奇をてらわず、スコアに忠実に。木訥とはしているものの、落ちぶれる前の大英帝国の輝かしい残照を示す、とでもいえばよいのか。録音もいいし、安心して聴ける。美しさの中に厳粛をたたえた「ニムロッド」をはじめ、「自分達の音楽」を誇らしげに演奏していて好感が持てる。堂々とした終曲に向かう構成感もよい。一つだけ、第13変奏の船のスクリュー音を表すpppのドラムロール、ちょっとだけうるさいんでないかい? 全体に特徴がないといえばそうだが、それだけ自然な演奏、ということ。作品の良さを味わうにはお薦めの一枚。 |
7.トスカニーニ指揮BBC響 1935年 ライブ
![]() (写真は私の持っているのとは違うけど、ネットから拝借しました) 前回登場のボールト卿が初代の首席指揮者を務めたBBC交響楽団にトスカニーニを招聘して実現した1935年の演奏会録音。生年が作曲家と近い(10歳ほど年下)トスカニーニが、国こそ違え同時代を生き、前年に亡くなったばかりのエルガーへのオマージュ、追悼の念を込めた演奏を展開する。 冒頭のテーマは作曲家の自演同様、ポルタメントを多用して情感たっぷりに奏でられる。マエストロ自身も歌っているようだ(笑)。有名な「ニムロッド」はじめゆっくりした変奏も同様で、トスカニーニの美点である伸びやかなカンタービレを楽しめる。 他方、速い変奏では一転して厳しい筋肉質の響きに。これ、ユーモラスに演じようとしたのかオケが必死に食らいついた結果としてそうなったのか。第4変奏W.M.Bや第11変奏G.R.Sあたりでは関西弁でいう「いらち」という言葉がぴったりくるほどおかしみがこみ上げる。柔と剛が入れ替わりつつ、気がつくと怒濤のフィナーレまで一気にたどり着く。彼が晩年に手兵のNBC交響楽団と残した録音はよりストイックでスコアに忠実な解釈だが、70歳を前に脂ののったこの時期の方がカンタービレにあふれていて好き。録音さえよければこの曲随一の演奏に挙げたいくらいだ。 演奏後は大喝采が聞かれる。大戦前のライブ録音でこれだけ盛大な拍手は聞いたことがない。〝われらがエルガー〟を華麗にさばいてくれたイタリアの名匠に ロンドンっ子も大喜びだった様子が伝わってくる。 |
| 8.ユーディ・メニューイン指揮ロイヤル・フィルハーモニック管 1994年 スタジオ ![]() 「なんちゃらサウンド」ってうんちくが書いてあるが、さすが平成に入っての録音、音がイイ。 えええ、メニューインの指揮い?とマユをひそめるなかれ。意外にも(失礼)なかなか良い演奏なんですよ、これが。 ヨガに凝っていた彼のこと、以前ベルリンフィルのイベントで、いきなり指揮台の上で逆立ちして「運命」の冒頭を足で振っていた絵をつい思い出してしまうが、さすがに今回は普通に立っての指揮(だと思う)、悠揚迫らざるゆったりしたテンポでしっとりとした英国のオケの響きが楽しめる。まあ、ビーチャムの創設したこのオケのこと、この曲なら目をつぶっていても弾けるのではないかという悪口は聞こえてきそうだけど。 で、この演奏、「Troyte」やフィナーレなどでは金管と打楽器、とりわけホルンとトロンボーンを強奏させ、豪壮な演奏になっている。 曲の最後ではパイプオルガンがサンサーンスの交響曲よろしく堂々と鳴り響いて全曲を締めくくる。ちょっとやり過ぎの感もあるが、シノポリ盤同様、若い人向けのお薦め。 ところで曲の最後のところ、人の叫び声のようなものが二回聞こえる。スタジオ録音のはずだけど、あれはなに?興奮したマエストロの声?だれか教えて。 余談をもう一つ。この録音、オーケストラの全メンバーの名前がクレジットされている。知っているような名前は見当たらなかったけど、ソロだけでなくオケの全メンバーの名前というのは珍しい。コンサートで配られるプログラムにはよくあるけれど、CDではあんまり見ないなあ。 |
9.ロルフ・クライネルト指揮 ベルリン放送交響楽団 ![]() これまで聞いてきたのはすべて英国のオケ。いったんドイツのオケに耳を転じてみよう。 聞いたことのない眠そうな名前の指揮者なのに、演奏はとても刺激的♡ 録音年は分からないが1960-70年代でしょう。 編成が比較的小さいのだろうか、ビブラートを抑え、乾いた硬質で透明感ある響きでテーマが提示される。各変奏では独自の解釈が随所に聞かれてはっとさせられる。 たとえば、第2変奏「H.D.S-P」はバイオリンの掛け合いが楽しい曲だが、普通は1stと2ndを同等に扱うところ、所々で2ndの強奏を挟み込み、曲にアクセントを加える。第4変奏「W.M.B」や第7曲「Troyte」では固いばちを使ったティンパニの打ち込みが強烈。第8曲「W.N」では女性の笑い声をオーボエがトリルで音階を上がって表現するところをスラーで演奏し、優雅な感じを引き出す。第10曲「Dorabella」ではビオラが主題の変奏をソロで奏でるはずが、なんとテュッティで演奏していてびっくり。首席びよりすとに演奏を拒否されたのかとも思ったが(笑)、音程跳躍があってこっちより難しい第6曲「Ysobel」では普通にソロをやっていた。驚いたけど、よくよく聞きこんでみると落ち着いて自然な音楽の流れが生まれているのに気付かされる。第13曲「Romanza」は静かな海と楽しい航海ーのはずなんだけど、突如荒れ狂う海が登場してまた静かになったり、ちょっと怖い。 そして終曲。マーチから始まって主題の断片の変奏が全オケで高らかに演奏される箇所、トロンボーンだけに一回目だけ指定してあるクレッシェンドを正確に行っているのが珍しい―自作自演盤でも書いたことをやってない(笑)―。またStringendoを忠実に行ったあとに短いゲネラルパウゼを設けて再現部(というのだろうか)に移るのも効果的で、フルトベングラーの第九、最終盤のあの「vor Gott!」を想起させる。オルガンは加えず、純粋なオケだけの演奏。 てな具合で、ドイツ人らしい引き締まった硬派のエルガーといったところで、聞き比べの醍醐味を味わわせてくれる隠れた名盤ではないだろうか。この指揮者、調べてみると東側で活躍し、このオケの常任をあのアーベントロートから引き継いでレーグナーにつないだ人物のようだ。西側ではあまり知られていないが、ほかの演奏も聴いてみたくなった。ちなみに併録はなんとルトスワスキのオケコン!。エルガーとなんの脈絡があるのだろう。やっぱり、ただ者ではない。 |
| 10.ハンス・ロスバウド指揮ケルン放送交響楽団 事情によりジャケ写真はなし。 ドイツの放送オケをもうひとつ。1956年のモノラル録音。ロスバウドはクライネルトより少し先輩だけど、西側で活躍し、ドナウエッシンゲンの現代音楽祭に代表される現代音楽の紹介に力を入れた人だからずっとメジャー。録音も意外に多い。 やはり硬質な響きで、やはり現代音楽の指揮者か、と構えていたらクライネルト盤よりずっとロマンティックな演奏。冒頭から第1変奏はアゴーギクに変化を持たせ、たっぷり歌う往年の巨匠スタイルを見せる。その後しばらく淡々と進んだかと思うと第8変奏「W.N」ではAllegrettoの指定を無視し快速に飛ばす。せかせかとニムロッドに突入し、ここでぐっとテンポを落とす趣向かと思いきや、それほどでもなくいっぱい食わされる。 続く第10曲「Dorabella」、知り合いの娘さんのこもったような口調を表す木管のリズム、楽譜指定のテヌートは無視。これは違うだろ?チャーミングなはずが木訥とした田舎娘になってしまった。いっぽうで第13曲「Romanza」は凝った演奏。ティンパニのドラムロールを大きめに取り、波の音を表しているようなビオラのフレーズが浮き沈みを鮮やかに描く。クラリネットソロも限りなく不安で、美しい。 終曲もやりたい放題。Stringendoの箇所、piu mosso(急に早く)で演奏されるケースが多いが、いっさい無視!のインテンポ。普通聞こえないホルンのパッセージを強調するなど、全体に不思議ちゃんの印象が強いまま、曲が閉じられる。 ひとこと。狐につままれたような演奏です。 |
| 11・ロリン・マゼール指揮 知人からもらった、おそらくエアチェックされた放送録音をCDRに焼いたもの。「マゼール指揮」しか分かりません。たぶん80-90年代の録音じゃあないかな。そのうまさでバイエルン放送交響楽団と見た。 マゼールらしい、けれん味たっぷりの豪快な演奏。ちょっとついて行けない部分もあるけど、まあ、爆演ということでご紹介。 すっと曲が始まったかと思えばコントラバスのずん!という強烈なアクセントを伴って冒頭のテーマからどんどん粘る。ねちっこいのは嫌いじゃないけど、これはやりすぎ。ちなみに全曲を通してコントラバスがよく鳴る。スペクタクルな印象を受ける一因だろうか。 第1変奏でもねちっこさはそのまま続き、途中止まってしまうのではと思うほどのリタルダンドをかけて綿々と歌う。全曲この調子かと思いきや、第2変奏以降は一転して爽快な演奏に。第7変奏「Troyte」など鋭いアクセントが利いてかっこいい。最後のシンバルの一閃、手で押さえず響かせて終える(専門用語わからん)のはちょっと驚いたけど。 さてお待ちかねのニムロッドは、心配をよそに極度に盛り上げることはせず、中庸だけど雄渾な熱い演奏で、とてもいい。 第13曲「Romanza」。中間部でクラリネットがメンデルスゾーンの序曲の引用を奏でる下でビオラが波の音のようなパッセージを延々やる箇所、コントラバスのソロも含めて細かい表情を付け、ドラマチックな効果を生んでいる。 そして快活なフィナーレはマゼールの独壇場だ。Stringendoの前でテンポを落として再現部(でいいのか?要するに冒頭のマーチ)になだれ込んでいくところなど、まさに千両役者という感じ。胸のすくエンディング、最後の二分音符はけれん味たっぷりにフェルマータさせて大見得を切る。聴衆も大喜び。でもこれロンドンでやっても受け入れられるのだろうか?とふと思った。 言い忘れたが、この曲にはビオラとチェロの独奏がそれぞれ2回ずつあっていずれもピアノなど弱音での指定がされているんだけど、どのソロもコンチェルトのように朗々と強奏されているのも面白かった。 |
12 レオポルド・ストコフスキー指揮 チェコフィル![]() 1972年のライブ録音。変わった組み合わせですが、商業録音のようです。拍手はなし。レコードの帯を見ると1977年に亡くなった彼の追悼盤なんですね。時代を感じます。 「外連味」という言葉も知らなかった小学生のころ、ラジオで聴いたショルティか誰かの演奏でこの曲を知り、もっとねちっこい演奏をーと楽しみに小遣いをためて購入したのに、それほど変わった演奏でもなくがっかりした記憶があります。併録の「法悦の詩」にえらい興奮した覚えはあるけど。今思えばヘンな小学生でしたね~。今でも全然かわらず変ですが(ほっとけ)。その後、本シリーズで最初に紹介したモントゥー盤に出会ってからはそっちばかり聴いていました。 で、あらためて聴いてみました。やっぱり粘っこい部分は多いとはいえ、前回のマゼールに比べればおとなしいものでした。 変わったところといえば、第5変奏「R.P.A」の最後をフェルマータで伸ばし、アタッカで続く第6変奏「Ysobel」は一転速いテンポで進めるのが印象的。「Troyte」は鮮烈な演奏で、最後、トロンボーンに楽譜にないクレッシェンドを付け加えて効果を増している。第12変奏「B.G.N」はアゴーギクに変化をたっぷりつけてよく歌う。この変奏では随一の名演ではないだろうか。 そして終曲。アレグロというよりプレストで勢いよく始まり、静かな部分はテンポを落としよく歌う。コーダ部分までの盛り上がりは次第にテンポを落としていくので最後はどんな大見得を切るのかなと思いきや、あれっと思うほどあっけなく終わる。 米国で長く活躍したストコフスキーだが、生まれ故郷の作曲家へのオマージュなのか、個性をぎりぎり抑えて曲の良さを伝えていると思います。チェコフィルはライブということもあってちょっと難あり。あんまりこんな曲は弾いたことなかったんだろうなあ。 |
